君の詩が色褪せても
身体を動かすことは彼の日課だった。

女の子みたいに奇麗な顔。

そうマスコミに取り上げられてから、日和は身体を鍛え始めた。

男らしくありたいという、願いを込めて。

作詞家としての自分を見てほしいという、願いを込めて。





青い空をぼんやり見つめてため息をつく。

潮の香りが甘くいざなう。



日和は、ふと何かを感じて起き上がった。



「へぷち…」






何だ今の声…?―




変なくしゃみ…―











彼は、ゆっくり首を動かし気配を感じた方に目をやった。




自分より約30メートルほど先の芝生の上で白い何かがモコモコと動いていた。


一瞬焦る日和。

目をこすって、再び同じ所を見る。



「へぷち…」


その変なくしゃみのような声は間違いなく目先の白いモコモコから発せられていた。




おい…―



なんなんだよ…―





日和は恐る恐る立ち上がりながらも、興味本位でモコモコに近づいていく。

足取りはどこかぎこちない。


日和は、少し離れた場所からモコモコを覗き込んだ。




……―



えっ…―





人間……?―
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