君の詩が色褪せても
第8章 偽りのないもの
弥生と律壱の姿はマンションの屋上にあった。
気まずくなった弥生が、用事を思い出したといって日和の部屋を飛び出した後、律壱が心配して追いかけたったのだ。
高層マンションの中二階に作られた非難用の屋上。
「…波の音」
弥生が手すりに肘をかけ、髪をかきあげながら呟く。
「うん…」
少し離れて律壱も同じ格好をしている。
「潮の香もするね…」
「うん…」
「真っ暗で何も見えないのに、海があるって解るんだね」
「弥生さん?」
「愛里子ちゃん…愛里子ちゃんが日和くんを好きだってことに気付けなかった自分が情けないの…」
黙り込む律壱。
「律壱くんは…知ってたんだ」
「まぁ……」
「律壱くん、日和くんのこと好きでしょ?」
サラリと流すように言う弥生。
「なっ…」
戸惑う律壱。
「それには気付いてたんだ」
弥生はクスクスと笑いながら話す。
「……おかしい…よな?」
「ん?」
「男が男を好きになるなんて変だよな…」
しゃがみこむ律壱。
「好きに変だなんて理由はないよ」