君の詩が色褪せても
「この仕事してると、そっちの方には詳しいんだ」
「そっち?」
「いわゆるBL」
「あぁ…なるほど…」
「取材もさせてもらうけど、みんな本気だから変だなんて思えないもん」
恥ずかしそうに律壱は鼻の頭をかいた。
「元々は、彼女に振られたことが始まりなんだ…」
「振られ…ちゃったの?」
「随分前の話…オレ、REACHって名義で歌も歌ってて、彼女はそのREACHの音楽を好きでいてくれた」
真っ暗闇の遠くを見るように律壱は喋り始めた。
「だけど、REACHの曲は一般受けするようなメジャーな曲じゃなくて…」
声を詰まらせる律壱を静かに見守る弥生。
「とてもマニアックな曲でさ、プロデューサーにREACH辞めてメジャーな曲を書くように言われた…」
「…辞めたんだ」
「実家も貧乏で、契約解除されたら困ったし」
「そっか…」
「辞めて、曲だけ作るようになった」
「彼女はそれがショックだったんだね」
コクリと頷く律壱。
「REACHの大ファンでいてくれた奴だったから…」
律壱は空を見上げた。
星があったら、きっと滲んでいただろう空。