君の詩が色褪せても
「……解らない」
弥生は手すりを強く握った。
そして涙を零しながら言った。
「私…、恋する気持ちを忘れちゃったみたいなの…」
「恋を忘れた?」
「解らないけど、恋を失ってしまった…そんな気がするの…」
そう…―
どこかに…
置き忘れたような…―
思い出せない…
どこか身近な場所に…―
あの日…―
私、どこにいたの?―
「食べないの?」
日和が愛里子に尋ねる。
じっと米粒を見つめる愛里子。
2人の姿はキッチンにあった。
「冷めるぞ、チンしたハンバーグ」
愛里子はうつむいたままだった。
「…日和、怒らないんだね。愛里子が弥生さんを追い詰めたこと」
「……」
「…もう、愛里子のこと嫌いになっちゃったよね」
「……」
「…愛里子も自分が嫌い。日和を困らせてるのが分かるから」
日和は言い返す言葉が見つからなかった。
「ごめんね日和。…愛里子、もう寝る」
愛里子はそっと席を立ち、自室に消えていった。