君の詩が色褪せても
日和の手が律壱の肩を掴んだ。
振り向かせた律壱の胸ぐらを掴んで壁に押しつける日和。
「何やってんだよお前!」
すごい剣幕で日和が叫んだ。
怒りに震える目を見つめる律壱。
「何なんだよ!お前には関係ないだろっ!!」
「……」
律壱の言葉に歯を食い縛る日和。
「お前は愛里子が心配なんだろ!他のこと心配してる余裕なんてあんのかよ!」
律壱は日和の腕を振り払った。
いつも温厚な律壱の怒鳴り声に日和は驚いて言葉をなくす。
そして、自分の行動に矛盾を感じギュッと目を閉じた。
「……話の続きは…愛里子…ちゃんが無事に見つかってからにしよう」
律壱は日和の震える拳を見ながら話した。
「……」
「携帯、繋がるようにしておけよ」
そう言い残し、律壱も部屋を出ていった。
崩れ落ちるように床に座る日和。
何してんだよ…オレ…―
雨は激しさを増す。
気分は更に沈んでゆく。
目に見えない何かに操られていると各々が感じる朝だった。
「あっ、もしもし。私です」