君の詩が色褪せても
「本が…沢山あって、平積みになってて……その横に…お人形が…」
手で台を探る弥生。
「あなた、随分前のお客様みたいですね」
「へ?」
顔を上げる弥生。
「そこには最近までキャンドルが並んでたの。でも昔は、私の母がオーナーだった時代は、あなたの言う通り、そこは本が積まれていたわ」
弥生は涙を一粒、台の上に零した。
「…やっぱり」
「特別な思い入れが?」
「私の人生…、ここで変わったんです」
「人生?」
「…あの日、私もあの窓から店内を覗いたんです」
過去を、忘れていた大切な過去を思い出していく弥生。
「この台にディスプレイされていた可愛い人形が気になって、そして店に入りました…」
女性は黙って弥生の話を聞いていた。
「お人形に近づいて、その隣にあった詩集に目が止まりました……」
まるで、そこに本があるかのように手を動かす弥生。
「沢山の種類の詩集があったけど、私が手にしたのは…とっても薄い冊子で…日本の学生が詩で賞を取ったことが掲載されているものでした…」
そして…―
お店の人に尋ねたの…―