君の詩が色褪せても
「いじめるよ?」
「S…?」
少女の口が開いた。
そう、オレはS…って…―
「起きた?」
首をかしげる日和。
「…今起きた」
少女の目がゆっくり開く。
大きな大きな瞳は目の前にいる日和を捕えた。
「あっ…」
想像以上に可愛かった少女の顔に、一瞬ドキッとする。
「……ひ…よ…り?」
彼女の口が、そう言った。
「オレのこと知ってるんだ…」
「知らない」
「はっ?」
話の噛み合わない2人は、しばし見つめ合っていた。
「えっ…だって、今オレの名前呼ばなかった?」
「…私、何か言ったの?」
きょどる日和に対して冷静な少女。
「日和って…言った…」
気がする…―
「何、それ?」
「…オレの名前」
「ひより…」
考え始める少女。
「にわとりさんの子!?」
と言って、少女は急に身体を起こした。
「……それ、ヒヨコ」
何だコイツ?―
からかってる?―
「……〜っ…ダメ。わかんない」
少女は頭を抱えて悩み始めた。
「いや、別に無理に思い出さなくていいから」
日和は呆れ顔だった。