君の詩が色褪せても
第9章 言の葉




あの日…


いつものように、この街を歩いていた…―




可愛いロリータ服を着てる娘が羨ましくて…―







下を向いて歩いた…―
















そして…

この店を見つけた…―




店の角が窓ガラスになっていて…―



そこから店内を覗いた―
















『いらっしゃいませ』

店員さんが優しく微笑んでくれた…―



『あっ…あの…』


『お客様、見ない顔ね。うちは初めて?』



『はっ…はい…あの…』


『どうしたの? 緊張しなくていいのよ』




『あっ…あの、窓から…素敵な人形が見えたものですから…』




『ああ、これね』


店員さんは私を手招きして人形のある台へ導いてくれた…―



『私の娘が作ったの』


『…娘さんが?』



『今は留学してるわ。私に似て物好きなの』


『…はぁ……』




『このお人形は虹の女神なのよ』



『虹の女神…?』


『Irisって解るかしら?』


『イリス……あの、ギリシャ神話の?』



『そう。そこの冊子を開いてみて』



そう言われて…
私は、あの冊子を手に取った…―
< 160 / 219 >

この作品をシェア

pagetop