君の詩が色褪せても
『一番最初のページよ、ある学生さんの詩が賞でグランプリを取ったの』
私は…
食い入るように冊子を覗き込んだんだ…―
『植杉…日和…さん』
『詩のタイトルを見て』
『…アイリス』
『花の名前よ。日本だと、あやめ』
『アイリスって…、ギリシャ語ですか?』
『そうよ。ギリシャ語でIrisは虹のこと』
『…虹…? あぁ、だから虹の女神の人形を飾ってたんですね』
『この植杉さんって方がギリシャ神話の虹の女神を知っていたのかは解らないけど、この詩の思いはイリスの想いによく似てるの』
『イリスの想い?』
『イリスのことはどこまでご存知?』
『…ゼウスの妻ヘラの待女だと、…ゼウスの求愛に困って、ヘラに頼んで虹の女神に変えてもらった…と』
私は…
それしか答えられなかった…―
『そうね、その通り。でも詳しく話すと、ゼウスはヘラに内緒で何度もイリスに想いを伝えたの。でもイリスは他の待女と違い、ずっと固く拒み続けたわ。ヘラは、その心に感動して、彼女に七色に輝く首飾りと大空を渡る翼を授けた』