君の詩が色褪せても
過去から戻ってきた私は泣いていた―
何故、こんな素敵な思い出を忘れてしまっていたのか…―
「そう。母が、そんな話を……」
女性も何もない台を見つめながら呟いた。
「とても親戚な方でした」
「あの詩が発表される少し前、私の父は事故で死んだんです」
「……?」
「留学先から一時帰国したとき、植杉さんの詩を読みました」
「そうだったんですか…」
だから、涙が…―
「母は今でもアイリスの詩を気に入っています。きっと、自分を重ねているのね」
アイリスか……―
「アイリス…」
小さく呟く弥生。
『私に勇気をくれたんです…』
あいりす…
『こんな名前どうかな?』
愛里子…
『この娘みたいになりたくて…』
妖精…ー
愛里子…ー
「…あの娘だったの?」
声を震わせる弥生。
「どうかしました?」
店員さんの顔を見る弥生の目が密かに潤んでいた。
「すみません…私…探さなきゃ!」
弥生は焦るように急いで店を出た。