君の詩が色褪せても
「私…、律壱くんたちと初めて会ったのはつい最近だよね……」
「うん…」
「場所は律壱くんたちの事務所だったよね?…」
「そうだよ」
「日和くんとも、そこで初めて挨拶したんだよね?」
「弥生さん…?」
呆然と立ちすくむ弥生に戸惑う律壱。
「…私が遅刻して…ファンですって言って…日和くんくんを怒らせた…」
「弥生さん…大丈夫?」
心配して顔を覗き込む律壱。
「弥生って…私の名前を…」
「…?」
春限定みたいな名前だって、あの人は言った…ー
前にも聞いたことがある気がする…ー
デジャブ…?ー
いや、…違うー
「律壱くん…私…」
両手で頭を押さえる弥生。
床に原稿が落ちる。
「記憶がない…」
「えっ?」
原稿を拾おうとした律壱の手が止まる。
「海…」
「海?」
「映画の主題歌の話が決まって…私は…海に見に行った……」
例の公園へ…ー
「でも、思い出せないの。何故…あの公園に行ったのか……」
理由があったはずなの…ー
とても大切な理由が…ー