君の詩が色褪せても
第10章 虹を越えて
雨が止む。
ビニール傘から雫が滑り落ちる。
日和は顔を上げた。
「虹…」
七色の虹がきれいな橋を作っていた。
「日和」
可愛らしい声。
少しだけ懐かしい声。
探していた妖精の声。
声の場所を探す日和。
「…愛里子」
まるで虹を越えて来たかのように、橋の先端、青空のもと、彼女は立っていた。
「……」
日和は無言で遠くを見つめる。
「日和…」
悲しげに、でも優しく微笑む愛里子。
「おっ…お前…、どこ行ってたんだよ。みんな心配したんだからな…」
日和は愛里子の目を見れず、緊張した面持ちで、たどたどしく言った。
うつむく愛里子。
「日和…、愛里子の本当のこと知ったんだね」
「……」
何も言い返せず、黙る日和。
「愛里子も記憶が戻ったんだ…」
「…」
「愛里子が何処から来た、何の妖精なのか、思い出したよ」
「愛里子…」
少しずつ、日和に近づいてくる愛里子。