君の詩が色褪せても
「そう…。弥生さんは自分は、その憧れの自分になれていないと思って悩んだ」
そして…
あの日、ここに来た…ー
「弥生さんは…何度も悩んで決断した」
たくさん泣いた…ー
この気持ちを失いたくなくて…ー
「恋する想いを放棄し、仕事に生きることを」
そして…
私はここに置き去りにされたの…ー
「…その、放棄された恋心が愛里子だったってことか」
「愛里子は彼女の恋心が生んだ妖精だから…」
悲しそうにうつむく愛里子。
「オレと律壱が会ってる弥生さんは、恋心がないってことか…」
日和も悲しい表情を浮かべた。
「日和のファンではあるけど、恋はしてない」
「……」
会話が途絶え、波の音だけが響き渡る。
「愛里子は…本当にただの恋心の妖精なのか?」
日和は愛里子に近づく。
「…そうだよ。記憶喪失にならなければ…私は…弥生さんのただの恋心だった」
記憶を失って…
偶然出会ってしまった…
この心が求める人にー
田中弥生から離れた存在…
愛里子個人として…ー