君の詩が色褪せても
弥生と律壱の姿は、まだマンションの前にあった。
「すごく大切な気持ちを私…忘れてる気がする」
涙が出るほど温かな気持ち…ー
「この漫画と……愛里子ちゃんと関係あるのかな?」
一緒に悩む律壱。
「アイリス…」
「日和の詩?」
特別な詩…ー
ファンになったきっかけ…ー
私を動かしてくれた…ー
臆病な私を…
弱虫な私を…
前進させてくれた…ー
植杉日和の詩が……ー
弥生の瞳から自然に零れた涙。
「弥生さん…」
潤んだ瞳で、弥生はあるものを捕えた。
雨上がりの晴れた空に輝く7色の虹。
律壱も弥生の見つめる方向に目を向ける。
「虹…」
思わずつぶやく律壱の言葉に弥生が頷く。
「海の方だな…」
海……ー
「弥生さん…これって偶然なんかじゃないよな」
「…日和くんに会いたい」
弥生は吐き出すように口にした。
「日和くんに会えば…何かが分かる気がする…」
「待ってて」
律壱は地下の駐車場へ走っていった。