君の詩が色褪せても
日和に見つめられ、愛里子の顔はほんのり赤くなる。


「名字は…ないの」



「へっ?」

我に返る日和。



「愛里子は妖精だから、名字はないの」



…………


「よっ…妖精?」



「そう。妖精なの。でも、なんの妖精だったのかも思い出せないの〜!」



はぁ〜?―



「お前、頭打ってるよ。病院行け」

真顔で話す愛里子から顔を背け、冷たく立ち上がる日和。



「病院はダメ!妖精は人間の病院はダメなの!」

愛里子も立ち上がる。



「ハイハイハイハイ…。じゃあ、動物病院でも行きなさい」

愛里子の言葉を冗談ととらえた日和は、手でシッシッのポーズを取り、立ち去ろうとした。



ふざけんな、何が妖精だよ…―




「待ってヒヨリ!」


愛里子の言葉を無視して日和は帰り始めた。



「ひとりにしないで…」



無視し続ける日和。



「愛里子、どこへ行けばいいの?」



涙声にも振り返らない日和。



「ヒヨリのバカー!!」


「バカはお前だろ!!」


愛里子の大きな叫びに、思わず言葉を返す日和だった。


「ありがとう、日和」

愛里子は笑顔で、そう言った。
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