君の詩が色褪せても
「…なっ、なんだよ」
少々不気味がる日和。
「ヒヨリの名前は、日本の日に平和の和だよね」
「……ぁ、ああ」
知ってるって、やっぱただの痛いファンか…―
「ありがとう、日和。出会ってくれて」
愛里子の笑顔は少し切なげだった。
「…何それ。意味分かんねぇよ」
「愛里子も分からないんだ。でも、これを伝えなきゃいけない気がしたの」
いつの間にか立ち止まっていた日和の足。
「マジで記憶喪失?」
改めて尋ねる日和。
「…何も覚えてないことをそういうの?」
「持ち物は?」
「ない」
日和は愛里子の背中に付いている翼のような羽根が気になった。
しかし、ロリィタ服にならよくある飾りだと考えて、あえて彼女に尋ねはしなかった。
「オレが帰ったらどうする?」
「…多分、ずっとここにいる」
愛里子は真っ直ぐ日和の目を見て言った。
「じゃあ、一生ここにいな」
愛里子を残して、日和は足早に立ち去った。
ママチャリにまたがって、ふと腕時計を見る。
「2時半か…」