君の詩が色褪せても
第11章 (第1〜10章タイトル語尾)+に
ピンポーン
日和の部屋のチャイムが鳴った。
急いで玄関に向かったのは律壱だった。
そっとドアを開ける律壱。
「あっ…」
「そのせつはご迷惑をおかけしました」
律壱に頭を下げたのは弥生のアシスタントだった。
日和がゆっくりと玄関に向かう。
弥生のアシスタントは日和にも深々と例をする。
「あの…、弥生さんは?」
あらたまった口調で尋ねる律壱。
「それが、…やっぱり思い出せないみたいで」
「そうですか」
「映画の主題歌がお二人に決まって、海に行った記憶までは、なんとなく覚えてるみたいなんです」
「でも…」
「はい。お二人にお会いしたことも、ここ数日間出歩いていたことも、全く覚えていないみたいで」
弥生はあの日、律壱の車で目を覚ました。
しかし、それまでの数日間の記憶を失っていたのだ。
知らない車から逃げるように降り、事務所に帰ってきたという。
「…これ、…弥生さんから借りてた服です…」
日和は沢山の紙袋を玄関に運んできた。
背中に穴の開けたワンピース。
ヘッドドレス、バッグ、靴、その他たくさんのアクセやあの日の傘。