君の詩が色褪せても
「何だよ?」
「いや、何でもない!」
「はぁ?」
律壱は言葉を飲み込んだ。
弥生の消えた想いを尊重して。
それぞれの旅立ちか…ー
「本当に良かったの?主題歌の話」
「うん」
弥生の事務所。
作業を止めてアシスタントが弥生に尋ねた。
「あんなに大好きで、折角のチャンスだったのに」
「いいの。今の自分じゃダメな気がするから」
「今の自分か…」
「ちゃんと働いてよ」
アシスタントの頬をペンでつつく弥生。
何か…
とても大切なものを…
忘れた気がする……ー
でも、検査で異常は見当たらなかった…ー
大切なもの…ー
何だったろう?…ー
植杉日和とは、デビュー前に一度公園で会った…ー
彼の作った詩が気に入って、漫画を描いた…ー
内容は忘れてしまったし、原稿も昔のものだから…
今更、探す気もない…ー
ただ…ー
私が漫画家になれたのは…
植杉日和の詩のお陰だ…ー