君の詩が色褪せても
日和はそのまま海辺の公園を後にした。






運命…






運命の出会い…




『ありがとう、日和』





信じない…




ドラマや映画の世界だろ…



『妖精なの』



バカバカしい…






『これを伝えなきゃいけない気がしたの』





なんで?…






『出会ってくれて』






出会い…






運命の…出会い…














日和は自宅に帰ってからも、しばらく愛里子の言葉が気になって、仕事どころじゃなかった。


つまらないと思っている運命ドラマの映像を瞳に移しながら、心は遠くを見ている。


開けっ放しの窓から湿った風が吹き込む。

春とはいえ、まだ五月の中旬。
日が落ちると肌寒い季節。


「…愛里子」


ふと零れる名前。



アイツ…―

本気でずっとあそこにいんのかな…―



頬杖を付き、無意識にペンを回す日和。


テレビ画面の中では、主演女優が相手役の俳優を寒空の下ひたすら待ち続けるシーンが流れていた。


日和の胸が何故かチクンと痛む。


「ドラマだろ…」



運命はドラマ…

運命は映画…
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