君の詩が色褪せても
「でも……」


言い掛けて止める日和。


立ち上がり、窓の外を見る。

昼間の晴天が嘘のように、灰色の雲が空を埋めつくしていた。



「確かめてみるか」

日和は部屋とママチャリの鍵を手に取った。






日和が向かった場所は、言うまでもなく例の公園だった。


海風にゾクッとする。


時計の針は6時を指していた。


日和はママチャリに乗ったまま、愛里子と出会った場所へ急いだ。




「……」



そこに彼女の姿はなかった。


ママチャリを下りて、芝生を蹴る日和。


なんだよ…―


やっぱり冗談かよ…―




ムスッとしていた顔が、やがて少し切なげな表情へと変わる。




運命…




運命なんて…



なかったんだ…




「踊らされちまった…。バカみてぇ…」

頬に貼りつく髪がうっとおしくて、日和は首を振る。

夕方の海。

ザワザワと泣いているかのように聞こえる波の音。

昼間の海は元気なイメージなのに、夕方の海はどことなく切ない。

とくに、こんな曇り空の下では…。




「帰るか…」

日和が呟いた。








「日和…?」

聞き覚えのある声だった。
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