君の詩が色褪せても
日和は愛里子の腰に手を掛け、片手で彼女を持ち上げると、ママチャリの荷台に座らせた。


「先に言っとくけど、オレに抱きついてないとマジ落ちるからな」

と言ってママチャリにまたがる日和。


日和が芝生を蹴ると、愛里子はガッチリ日和の腰に抱きついた。



公園を後にするママチャリ。

海辺の街を全速力で駆け抜ける。

愛里子の髪がなびいて、スカートがふわふわ揺れる。

街灯がキラキラと2人を照らしていた。



まるで、映画のワンシーンのように…。




「日和!」

愛里子が大きな声で呼び掛ける。


「えぇー?!」

日和も大声で答える。



「どうして…、どうして来てくれたの?!」



「運命!」


坂道を流れ落ちるママチャリ。


「運命が何か知りたかったから!!」



そう…―


ただ、それだけ…―


「……分かったの?!」



「まだ、分かんねぇー!!!」


静かな街に日和の声がこだました。

ママチャリは1本の線を描くように、止まることなく公園からマンションまでの道程を超加速で走った。


「足、大丈夫?」

エレベータの中で愛里子が気遣う。


「鍛えてるから平気」
< 24 / 219 >

この作品をシェア

pagetop