君の詩が色褪せても
エレベータを降り、日和の部屋の前に立つ2人。


「愛里子」

「ん?」

「手、出したらゴメンね」

そんな気はないのだが、日和は真顔でそう言ってから部屋の鍵を開けた。



「おじゃまします」

何のためらいもなく部屋に入る愛里子。


「変な奴…」

そうつぶやきながら、日和は広いリビングを片付け始めた。


「愛里子も手伝う?」

きゃぴきゃぴした声で尋ねる愛里子。



「いい。ヤバい雑誌落ちてると思うし…」


日和はとりあえず軽く雑物の整頓だけした。



いつの間にかソファーに座り、テレビと向き合っている愛里子。


その手には1枚の紙。



「…運命…1番遠き愛しき存在…」



「バッ…!お前、何勝手に読んでんだよ」

日和は慌て愛里子から紙を奪いさる。


「だって…。落ちてたから」


「落ちてたからって、人の物勝手に触るなよ」

日和は少々顔を赤らめながら、紙を丸めてごみ箱に捨てた。



「何だったの今の?」

好奇心旺盛な愛里子の瞳。


「いい女を落とすときの口説き文句」


「口説き文句?」


「だから、お子ちゃまな愛里子には関係ないの」


「ふ〜ん」
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