君の詩が色褪せても
窓ガラスに頭をくっつけたままボーっとしてる日和からは返事がない。


「拾い物って女?」


律壱は戸惑いもなく、ズバッと尋ねた。


「…何で分かるんだよ!」

動揺する日和。


「マジで…?!」


冗談のつもりで聞いた律壱は、驚いて思い切り日和の方に首を曲げる。


「バカ!前見ろよ!」



律壱のテンションと共に、車のスピードも落ちた。


「女って…そんな軽々しく言うなよ…」

どこの夜蝶様だよ…―


「律壱が言ったんだろ」


「犬猫じゃないんだから、簡単に拾うなって…」



「だよな…」


「そーだよ…」







「妖精だもんな」




…………



「はぁっ!?」




思わず律壱はブレーキを踏んだ。


「お前…危ねーよ…」


「妖精?」



「1から説明するから、安全運転して」

そう注意して、日和は事務所に着くまでの間、律壱に愛里子のことを細かく説明した。



「それって、ただの危ないファンじゃね?」


「オレもそう思ったんだけど…」


2人が訪れたのは都心にある立派な建物だった。
沢山のミリオンアーティストが所属し、レコード会社も兼ね備えているその最大手事務所に2人も所属していた。
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