君の詩が色褪せても
沢山ある会議室の中では、割と小さめの部屋で2人は車の中での話を続けていた。


「植杉くん、服部くん」

ノックをして事務所関係者の男性が入ってくる。


愛里子の話は一時中断となった。


「向こうの先生、遅れてるらしいから、これ読んでてって」



2人は漫画の単行本を手渡された。



パラパラとページをめくり、漫画の台詞を拾っていく2人。



「これ…」

律壱が呟く。


「運命ドラマより面白いかも」

日和が続けた。



「この弥生美桜って漫画家、人気あるんですよね?」

単行本を閉じ、事務所の男性に話し掛ける律壱。


「よく知ってるな?」


「お前…、映画主題歌担当するんだから少しは勉強してこいよ」


「そっか…」


律壱と日和のやり取りに微笑む事務所の男性。


「個人事務所持ってるらしいよ」

その男性も話に加わる。


「漫画家で個人事務所かぁ…すげーな」

日和は単行本の表紙をじっと見つめながら言う。


「しかも若干25歳なんだって」


「「マジで!」」

2人の大声が重なる。


「オレたちより3つ上なだけじゃん」

そう言って、日和は単行本を食い入るように読み出した。
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