君の詩が色褪せても

「それで映画化ですか…。世の中には天才がいるんですね…」

律壱はため息まじりに語る。


「何言ってるんだよ。君たちだって、才能溢れるからここに居るんじゃないか」

「うーん…」

考え込む律壱。


「映画主題歌の話だって、その先生からの直々の依頼だし」


日和はそんな話も聞かず、夢中になってページをめくっていた。



「先生、お見えになられました」

ドアを開けて事務所の女性が声をかけた。



スッと立ち上がる律壱。


それを見て日和もゆっくり立ち上がった。


「美人かな?」

こそっと律壱に話し掛ける日和。


「…なんか、できる女っぽい気がする」

姿勢良く答える律壱。



「どうぞ、こちらです」


女性が招き入れる。


2人は何故か期待していた。


「はっ…はぁ、スミマセン…」


高くて、オヤジが好きそうな可愛い声がした。



弥生美桜。

デビューは18歳。
各世代に人気の言わばカリスマ漫画家。
出す作品は必ずヒット。
これまでの、アニメ化、ドラマ化は数知れず。
しかし、本人の顔出しは一度もなかった。



男性人の目が入り口に釘付けになる。


「遅く…なりました。スミマセン…」
< 35 / 219 >

この作品をシェア

pagetop