君の詩が色褪せても
「それで映画化ですか…。世の中には天才がいるんですね…」
律壱はため息まじりに語る。
「何言ってるんだよ。君たちだって、才能溢れるからここに居るんじゃないか」
「うーん…」
考え込む律壱。
「映画主題歌の話だって、その先生からの直々の依頼だし」
日和はそんな話も聞かず、夢中になってページをめくっていた。
「先生、お見えになられました」
ドアを開けて事務所の女性が声をかけた。
スッと立ち上がる律壱。
それを見て日和もゆっくり立ち上がった。
「美人かな?」
こそっと律壱に話し掛ける日和。
「…なんか、できる女っぽい気がする」
姿勢良く答える律壱。
「どうぞ、こちらです」
女性が招き入れる。
2人は何故か期待していた。
「はっ…はぁ、スミマセン…」
高くて、オヤジが好きそうな可愛い声がした。
弥生美桜。
デビューは18歳。
各世代に人気の言わばカリスマ漫画家。
出す作品は必ずヒット。
これまでの、アニメ化、ドラマ化は数知れず。
しかし、本人の顔出しは一度もなかった。
男性人の目が入り口に釘付けになる。
「遅く…なりました。スミマセン…」