君の詩が色褪せても
入ってきた女性は、緊張した様子でそう言うと、深々と頭を下げた。


無言になり、立ちぼうけする日和と律壱。


「はっ…はじめまして。やっ…弥生美桜と申します…」

顔を上げる女性。


「やっ…弥生…さん?」

律壱が尋ねる。


「はい…。あの…、お待たせして…スミマセンでした」


スミマセンを連呼する女性。
つまり、弥生美桜。


そのたたずまいは2人の想像とは、遥かに遠いものだった。


身長は150cm位の小柄。
髪は真っ黒のショートカットで少し寝癖がある。
ほぼ素っぴんの顔は古い形の眼鏡で暗い印象をあたえる。
服装も淡いグレーのシャツにジーパンといった地味な格好だった。



「では先生、お時間になったら迎えにあがります」

そう言って、弥生美桜より派手な事務所の女性は去っていった。


「あっ…わざわざスミマセン…」

律儀に頭を下げる弥生美桜。


「では、今回はお3方での顔合わせということなので私も失礼します。あぁ…先生、こちらのお席へどおぞ…」

弥生美桜のためにイスを引いて、男性も肩を落とし気味にそそくさと退散した。


「スミマセン…」

ドアに向かって頭を下げる弥生美桜。
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