君の詩が色褪せても
1枚の紙きれを片手に、立ち上がる日和。

「運命…」


口の中でもごもご言葉を繰り返しながら、彼は鏡の前に立った。


鏡の中には、まるで漫画の世界から飛び出して来たような美少年が映る。

パッチリとした大きな二重の瞳に長いまつげ、すじの通った鼻、ふっくらとした血色の良い唇、長めの茶髪が耳元から首にかけてフワフワしている。

そう、まるで少女のような顔である。


「…」

日和はそんな自分の顔を見つめ、眉間にしわをよせながら頬を膨らませた。

そして無数にあるサングラスの中から一つを選び、近くにあるキャップを深くかぶった。


鏡の中にはニヤっとした日和。

しかし、その姿は先程とは少し違う。

細身で筋肉質なボクサー体系の少年。


白のタンクトップに丈が長めのフード付きジャケットをはおった。


握られていた紙はいつの間にか消えて行方不明になっている。




「行ってきまぁ〜す」


鍵を指でクルクル回しながら、誰もいない部屋に大きな声でそう告げる日和。



彼は自室を飛び出すと、目の前にある立派なエレベーターに乗りB1のボタンを押した。


高級感のあるエレベーターがゆっくりと下っていく。
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