君の詩が色褪せても
律壱は真剣な眼差しで日和を見つめた。


「分かってるよ…」


「なら、戻ろう」



「ゴメン…。ちょっと休ませて」


日和の目はうっすら潤んでいた。

律壱はそんな彼の頭をクシャクシャと撫でる。


「お前の気持ちは、オレが一番知ってる。だから、頭冷やしたら…ちゃんとオレのとこに来いよ」


力強い律壱の言葉に、日和はコクりとうなづいた。






会議室に戻る律壱。


目の前にある弥生の後ろ姿は震えていた。


「…ごめんね」


ドアがパタンと閉まって、弥生が振り向く。


「…日和くんは…?」


「頭冷やしてくるって」




「ごめんなさい。軽い気持ちで関係ないこと言っちゃって…」

弥生は眼鏡の下の涙を指ですくう。


「あいつは、自分のファンに対しては誰にでもああなんだよ」


「誰にでも?」


律壱はイスではなく、窓枠に腰を付く。


「コンプレックスなんだ…自分のルックスが。こっちからしたら羨ましい話だよ」


「…それって…アイドル扱いされた時のトラウマなのかな…?」


「……」



「彼が高校生の頃の…」

弥生は顔を上げて遠くを見る。


「やっ…弥生さん…、知ってるの?」
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