君の詩が色褪せても
「あっ…ごめんなさいっ。日和くんの話だと…熱くなってしまって…。嫌だな…初対面なのに……」
弥生は恥ずかしがってピシピシとおでこを叩いた。
「今の話、日和に聞かせてやりたかったよ」
彼女は、日和の本当のファンだよ…―
「録音しとけば良かったかな」
机の上にあるテレコを見て弥生は真剣にそう言った。
その滑稽さに律壱は思わず吹いてしまった。
分かってる…―
全員が全員…
そう思ってないこと位…―
今のオレが…
勘違い男だって思われてることも…―
でも…
あの過去は…
消せない…―
消えてくれない……
日和が会議室のドアを開いた。
弥生の姿はなく、律壱は日和に微笑みかけた。
「時間だからって、連れて行かれちゃったよ」
「…そっか」
どことなく肩を落とす日和。
「弥生さんの連絡先は預かっておいたから」
「ぁ…ああ」
「帰るか。運命ドラマの仕事もあるしな」
律壱は日和の肩をポンポンと叩いて退室した。
帰りの車の中、律壱は弥生との出来事には触れず、ほぼ無言で車を走らせていた。