君の詩が色褪せても
その声は、間違いなく愛里子のものだった。


「愛里子!」


日和は律壱を弾き飛ばしてキッチンへ向かった。



「あっ…おかえり日和」


愛里子は笑っていた。


でも、その姿は食材まみれだった。

小麦粉、卵、マヨネーズにケチャップ、明太子、豆腐、ホイップクリーム…。


純白の可愛い愛里子はキッチンで爆発したかのようにドロドロと汚れていた。



しばらくして、律壱が顔を出す。


「…確かに美少女たけど、こりゃ酷いな」


愛里子が律壱に気付く。


「あっ、もしかしてM…じゃないや…、日和のお友達でお仕事仲間のりいちくんですか?」


「…オレのこと、知ってるんだ?」

さりげなく聞く律壱。


「オレが教えたんだよ」


「へぇ〜、珍しい」

律壱は嬉しそうに日和の肩を叩く。



「で、愛里子ちゃんは今何をしてるの?」


唐突な質問。



「お料理」


しかし、愛里子の返事は早かった。



「…そうじゃなくて…、何でそんなカッコになってんの?」

日和が頭を抱えながら聞いた。



「日和のために、ご飯作ろうとしたら…」

「したら?」


「失敗したみたい」
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