君の詩が色褪せても
オイ…―


「何、勝手なこと言ってんだよ!」

律壱に突っ掛かる日和。


「謝っちゃえよ」

いつになく爽やかな微笑みで律壱は言った。



「いっ…いつ来るの?」


「もうすぐ。家近いらしいよ」


「はっ?」


「だから、早く迎えに行きんしゃい」



マジかよ…―



律壱は無理やり日和の背中を押した。



「…クソ律壱」

日和は渋々、部屋を出て行った。




「誰に電話してたの?」

愛里子が律壱に尋ねる。


「お仕事相手の人だよ」


「女の人…なんだね」

愛里子は不安そうな顔をする。



「愛里子ちゃん、日和が好きなの?」



コクリとうなづく愛里子。

「そっか…」



「りいちくんも日和が好きでしょ?」


「えっ…」


「隠しても愛里子には解るよ。お友達として以上に好きだってこと」

愛里子は真っ直ぐ律壱を見つめる。


「…さすが、妖精さんだな」

律壱は苦笑いをしながら答えた。


「日和は何も気付いてないね」


「気付かれても困るだけだよ。報われない恋なんだから…」


律壱と愛里子は互いに悲しげな表情を作っていた。





その頃日和はマンションのエントランスに居た。
< 51 / 219 >

この作品をシェア

pagetop