君の詩が色褪せても
しゅんとして俯く弥生。



「いや、あれは…オレが悪いんだよ…勘違いしてたみたいだし…」


日和も目を背けて話す。



「でも…」



「そのことは忘れて…。オレも忘れるから…」



忘れたいから…―




弥生は日和が見ていないことに気付いていても、コクリと頷いてみせた。


「…映画の曲は、律壱と頑張るから…」






「…ありがとう」




不器用同士の会話。


話せば話すほど、互いの距離が遠くなる。


解り合いたい…


その思いは一緒なのに。






エレベーターの扉が開く。

日和の部屋の前。
弥生はゴクンとつばを飲んだ。


「本人は妖精って言ってる。でもオレも律壱も信じてない」

日和は部屋の前で弥生に再度説明した。


「私は、背中に羽根がくっついてるか確かめればいいんだよね…」


「うん…」



そして扉は開かれた。



「おかえりー」

律壱の声。


「おっ…おじゃまします」


「弥生さん、いらっしゃい」

ニコニコ微笑む律壱。



「ここはオレの家だけど」

日和はニコニコ律壱を鋭い目で見た。



「かっ…可愛い…」
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