君の詩が色褪せても
日和と律壱の目でのやり取りの後ろで、弥生がポツリと発した。


弥生の目は男性人を飛び越えて、あるものを捕らえた。



そう。



ドロドロ愛里子だ。



「あなたが愛里子さん?」

急にテンションを上げて愛里子に駆け寄る弥生。


「…はい。あなたは…日和のお仕事仲間さん?」


「あっ、ごめんなさい。自分から名乗るのが礼儀だよね。私は弥生です」

弥生の目はキラキラしていて、エレベーターの中とは別人だった。



「やよい…さん?」


「そう。漢字だと、3月の弥生」



「弥生…さん」



「本名は田中弥生なんだけど、弥生美桜ってペンネームで漫画描いてます」



「漫画…」


愛里子はキョトンとしていた。


「すごい!この金髪は地毛なの?お洋服も素敵!」


愛里子と反対にテンションが上がりまくる弥生。



「あっ…あの、弥生さん?」

こちらも目が点の状態で声をかける律壱。


弥生は、愛里子のスカートをつまみながら、ニコニコ笑顔で振り返る。



「…例のこと…」



「あっ、スミマセン!」 
弥生は慌て我に返った。


日和は言葉を失っている。


「よろしく頼むよ」

全てを律壱が代弁していた。
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