君の詩が色褪せても
律壱は床に零れたホイップクリームを指ですくった。



「信じる訳ないじゃん」

冷たく言い放つ日和。



「もし愛里子が妖精だったら、お前どうするの?」


「陽性?」


「バカ!妊娠検査薬じゃねーぞ」



「律壱…よくオレの言葉を理解したな…発音同じなのに…」

とぼけてみせる日和。


「お前の考えそうなことだからだよ」


「そっか…」






「でも、似たようなモノかもな」




愛里子がヨウセイだったら


どうする?―




日和は目を閉じた。



オレは…
どうする…―







愛里子たちがバスルームに入ってから30分近くが経過していた。



その間、ずっと続いた沈黙の時。




シャッ―


脱衣室のカーテンが開いた。


出てきたのは弥生ひとりだった。



「これ、見て」



弥生は自分の携帯電話を日和と律壱の前に差し出した。



……―



日和はドキッとして息を飲む。



携帯画面には愛里子の背中が写っていた。



「これが、彼女の背中…。羽根は確実に背中から生えてる」

弥生の目は真剣だった。



「まさか…」


嘘だろ…―
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