君の詩が色褪せても
背中には、勿論羽根が生えている。


愛里子の羽根。


妖精の羽根。






日和はポカンとしていた。


「この服、弥生さんの?」

律壱が訪ねる。



「うん…。こういうロリータとかゴシックの服が大好きで家に沢山あるから」


「そっか、原宿とかで買い物するって言ってたね」


「私のサイズだから、少し丈が短いかもしれないけど、羽根の場所に合わせて切れ込みを入れてみたの」

そう言って愛里子背中に手をかざす弥生。


愛里子は照れ臭そうに俯いていた。



「スゴい…」

感心する律壱。



「ちゃんと縫ってあるからほつれないと思う」


「今、縫ったの?」


「お裁縫は好きだから…」

弥生は恥ずかしそうに愛里子の服を整えた。




「日和?」


黙っている日和に声をかける律壱。



「……」


「おい、日和?」


「…ん?」

我に返ったかのように答える日和。



「日和…?」

不安そうな顔で愛里子は呼び掛けた。



「かっ…かわいい…じゃん…」


どこかぎこちなく、目を泳がせる日和だった。




「ごめんなさい…。また、余計なことしちゃったかな?」

彼の様子を見て、弥生が肩を震わせた。
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