君の詩が色褪せても
ため息をつきながらキッチン掃除を始める日和。


「愛里子も手伝う!」



「ダメー!!」


鬼の仮面を被った日和が手をバッテンにして大声で阻止する。



「何で?」


「まだ前の洋服乾いてないから、それ以上汚れるな!」



その前に…
手伝うって…
悪いのはお前だろ―




「つまんないのぉ〜」







夕日に染まる海。

オレンジの海はいつも心を落ち着かせてくれる存在だった。



波の音を耳にして、また深くため息をつく日和。








「日和?」




「何?」






「…世界って、キレイだね」




は?…―






「愛里子は、日和のいるこの世界が大好きだよ」




「何、訳分かんねぇこと言ってんだよ…」



愛里子の瞳も夕暮れ色に染まる。

髪がキラキラに輝いて、背景のカーテンに溶けて姿を消してしまいそうだった。







ピンポーン…





玄関のチャイム。

愛里子が玄関に向かおうとしたが、日和に腕を握られて引き止められる。





「どちらさん?」


日和はインターフォンの受話器を取る。




「あっ…私です…」
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