君の詩が色褪せても
ゴクっと唾を飲む日和。



「どうって、弥生さんのこと?」




黙って頷く愛里子。








「不思議な人だよ。初対面の時は暗い感じだったのに、今日はなんか弾けてて」






「それだけ?」



愛里子の瞳が心なしか潤んで見えた。



どこか、淋しそうな顔。






「それだけだよ。お前、何を探ろうとしてんだ」


嫌な感じだ―




「オレ、そーゆー遠回しで面倒臭いの不愉快なんだけど」




日和は立ち上がると、リビングの窓に鍵をかけ、カーテンを閉めた。






愛里子に背を向けたまま話しだす日和。



「愛里子のこと、妖精だとは認めたけど、運命の話を認めたわけじゃないから」





「日和…」




「勘違いするな。お前をここに置いてるのは義理で、それ以外の感情はないから」



「……」



「運命なんて言葉、信じてないから」



それを気やすく使う奴も―






再びキッチン掃除を始める日和。


愛里子は、そっとティーカップを運んだ。




ぎこちなくキッチンに並ぶ2人。





「日和は…」



愛里子の声に自然と耳が傾く。


可愛い涙声。
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