HOTEL
遠くにあった意識が光に迎えられた時、とても眩しくて、逆光のせいか目の前にいる人がはっきり見えず、一瞬誰かわからなかっていなかったが、あの独特な声が美知子なのだと知らせてくれたのだ。

「…あれ…どうしたの?」

「いきなり倒れて、全然起きなかったんだよぅ(涙)どうしちゃったのさぁ〜、心配したよぉ、起きてよかったよぉ」

私が目を覚ました事で安心したらしい。
そのせいで、一気に緩んだ涙腺でぐしゃぐしゃになって、目を真っ赤にした美知子の顔がそこにはあった。

自分的にはそんなに時間は経っていなかった気がするのだけど、かれこれ30分以上経っているのだと聞かされた時は驚いた。

「だいぶ、倒れてたんだ…。心配かけてごめんね?」


心配かけまいと、起き上がろうとすると、強烈な目眩と頭痛が襲ってくる。

「…っつ…」

「無理しちゃ駄目だよ、ちょっと陽射しが強かったし、日陰まで運んだから、そのまま休んでなさいね?」

と久住が優しく言うと、どこにそんな体力があるのかと思う華奢な身体なのに、至極簡単に抱き抱えて(――…お姫様だっこって…。)、運んでくれてたのだった。

お言葉に甘えて休んでいると、神宮の近くに行けば行く程しんどかった空気も嘘みたいに消えうせていた事に気付く。
それに加えて、日陰でのそよ風が清んでいて随分気持ちよかった。

「…ありがとう、ちょっと落ち着いた…わ。」

「本当に大丈夫?まだ時間はあるからまだしばらく休んだ方がいいよ?」
と久住が心配そうに聞く。

「うーん…もう大丈夫そうだし、せっかくここまで歩いたから中まで行こうよ。」

「はんなぁ、気を遣わなくていいんだよぉ。」

「気を遣ってるんじゃなくてさ、私が行きたいの!」
そう言わないと皆が気を遣いそうだしね。
まぁもう大丈夫だろう。




あの御神木を通りすぎると、立派な神社があった。まるで、過去にフラッシュバックしたような錯覚に陥る程、古臭くて、厳格な空気が流れている。

なぜだか観光客もほとんどいなくて、巫女さんがちらほらと歩き回っていた。

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