HOTEL
鳥居をくぐって、参道を歩いていくと拝殿(普段人々が参拝するときに目にするもの)があり、奥には本殿(御神体が安置されている)がある。
境内には摂社や末社もある。


おそらく本殿から出てきたであろう拝殿の裏から祈祷師というのか…年配の神職の方が歩いてきていた。

すると、ぴたりと止まって参道を歩いていたこちらの方を凝視している。

久住は首を傾げて、
「もしかしてこっち見てる?何か失礼な事をしたのかな?」と心配していた。


「ほんとだっ、何かこっち向かってきてるっ!」

「やべ、何か顔が怖いんだけど!」

美知子と武井が怒られるのかとビクビクしながら話している。

当の私は金縛りにあったように動けず、しゃべる事もできずに固まっていた。


神職の人が私達の目の前にくると一言
「そちらのお嬢さん、ここに来るまでに何かありましたか?」と問う。

「わ…、私?」
あっ、声が出た。

「そうです。」

「あ、はい、少し体調悪かったですけど…」

「………やはり…。君達、少しばかり社務所にいらして頂けますか?」






社務所に入ると、中は古臭い外観とは違って、近代的だった。
簡単に言えば事務室みたいな所で、奥の応接間らしき所まで案内された。

私達はソファ(これは結構年季が入っている)に腰掛けると、向かいに神職さんも座る。

「いきなり、すみませんね。さぁさぁ、そんなに固まらないで下さい、お話するだけですのでね」
とさっきとは打って変わって優しい笑顔を浮かべている。
人懐っこい笑みに私達もやっとほっと一息つく事が出来たのだった。
しかも、お茶や和菓子までおもてなししてくれたので、皆笑顔になった。
神職さんが名前を聞いてきたので、軽く自己紹介になった。

「さて、改めて、急にすみませんでした。南さん、あなたを見た時に、微かに黒い影があったので、気になったのです。」

「黒い影…?」

「ふむ…何て言ったら良いのでしょうかね、あなたが引き寄せているもので、怨念の名残というのか…」

「怨念?何かに憑かれてるってことですか?」
これには皆驚いた。

「いえ、憑かれているという訳ではないようです。ただあなたが持つ力に呼応していると言う事です。」


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