HOTEL
K県は昔ながらの名残が残っている県で、国の重要文化財として指定されている国宝なども多くある地域らしい。

優秀な美知子が一生懸命説明してくれるのだが、歴史やそういった類に興味がなかったので、あそこの団子でも食べたいなとか、あの動物なんだろうとかいかにも観光地って感じだなとかまったく関係のない事を考えていた。

すると武井が
「お前どうせあの団子食いたいとか思ってるんだろ?卑しいねぇ」

「だから何?」

「相変わらずのクール気取りだよな」

「はぁ〜構うのも面倒くさい。」

と言った具合で、ごちゃごちゃと煩く口出ししてくる。

「もー武井!口が悪すぎるよ。あっ、あそこの建物の中すごいよ!鎧が置いてあるよ。」
とこのピリっとした空気を変えたのは武井と幼なじみの久住翔だ。
フォローしてくれたのはありがたいが、彼はいわゆる典型的な王子様タイプで、甘いマスクの優しい色男。
そのせいで、この二人が揃うと余計面倒事が増える。他の女子の妬みと視線に晒されるからだ。

何がいいのか私にはさっぱりわからないのだけど。


そこで美知子が
「ちょっとぉ〜、皆聞いていないでしょう。」
とぷりぷりと怒っていたので、武井には心の中で舌打ちしつつ、
「ごめんごめん、美知子、なんかさ私お腹すいたしから、あそこの団子食べない?」
と言ったら彼女は満面な笑顔でうんっ!と頷いた。
なんて可愛いい子供だ。
他の二人も同じ気持ちだったようで、少しは許してやるかという気持ちにもなった。
我ながら美知子のことが絡むと単純なものだ。

いかにも観光向けのお茶屋さんで団子とお茶を飲んでいたら、
久住がいきなり言い出した。
「そういえばね、インターネットで僕達が泊まるお店を調べようと思って、検索にかけたんだ。そうするとさ、凄い豪華なんだよ、まるでセレブが泊まるような!そんな所にどうして行けるのか謎なくらいに。」

修学旅行に泊まれる旅館なんてたかがしれてるはずだ。
この時、何かひっかかった様な、嫌な予感がしたような、気もしたのだが、セレブ並と聞いた武井がまた騒ぎ出したので、そんな予感も頭の隅の方に行ってしまった。

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