二十歳計画

聖二君と観た映画は普通の恋愛映画だった。

けど、高校の頃からずっと憧れていた聖二君が、私の隣にいると考えただけで頬が紅くなって、終わった時には内容なんて一つも覚えてなかった。


二人で映画館を後にする。

「今日はいきなりごめんね。でも、鈴木さんと一緒に観れて楽しかった」

ありがとう、と相変わらずの笑顔を向けて聖二君は駅に向かって歩き出した。


私はその背中を見つめて、今しかない、と思った。これを逃したら聖二君と出会うことは、もう、ないだろうと。


「聖二君!!」

走って聖二君の腕を掴む。聖二君が振り向く。

「どうしたの?」

聖二君は心配そうに私の顔を覗き込む。

私は握っていた手を離して大きく深呼吸をする。そして聖二君の顔を正面から見つめた。

「ずっと、聖二君に言いたかったことがあって」

聖二君は静かに私を見つめる。

服を掴んでいる手が震えている。

「私、高校に入るまではすっごく地味な子でね、高校生になって初めて聖二君と会ったとき、あんな私にも明るく接してくれて、すごい嬉しかった…」

「うん」

「聖二君と並べるようになりたいって、綺麗になって自分の気持ち伝えたいって…」

聖二君は静かに聞いている。

私は心の中で、何度も頑張れ、頑張れ、と繰り返した。

「卒業式の日、言おうと思ってた。けど、聖二君には、もう、大切な人がいて、結局、言えなかった」

あの時の感情が甦ってきて、私の視界にスモークがかかった。

(泣いちゃダメだ!!ちゃんと気持ち伝えるんだから!!)

服の袖で涙を拭って、もう一度聖二君を見上げた。

「好きでした」

「高校のとき、初めて聖二君と会ったときから、ずっと好きでした」

瞬間、またさらに目から大粒の涙が出てきた。

(止まらないよぉ……)


周りから見たら、自分たちはどのように映っているんだろうか。

迷惑をかけてしまった、と自分の行動を悔やんでいると、

「鈴木さん」

優しい声が頭の上から降ってきて、顔を上げる。

「ありがとう」

見上げれば聖二君が微笑んでいて、私も吊られて笑顔になった。

聖二君の笑顔はこれ以上にない位の優しいものだった。

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