時を越える愛歌
お姉ちゃんと別れ、あたしは街中を歩き回った。
回りはだんだんと明るさを失い始め、夕日も沈もうとしている。
あたしの足首にも若干の痛みが走り始め、ゆっくりしか歩けなくなっていた。
ここはどこなんやろう、
何処に行けば良いんやろう。
祐介に逢いたいが為にお姉ちゃんから離れ、家を探し続けている。
でもそう簡単に見つかるわけでもなく、まだ慣れて居ない土地を歩くのには少し勇気がいった。
奈美「何処なんかな…」
足の痛みを我慢しながらふと顔を上げると、微かに見慣れた光景があたしの視界に映し出されていた。
ここはきっと…
奈美「あの時、あたしが歩いてた…」
幽霊となったあたしが気がつけば歩いていた街中やった。
その時と同じようにたくさんの人が行き交い、忙しそうに歩いていた。
奈美「ここは、ここは…」
嬉しくなって走ってしまった。
足の痛みなんてもう感じないけど、あの時と違ってあたしは生きてる。
しっかりと心臓は鼓動を刻んでるし、生きているという気持ちがする。
きっとこれはあたしの運命。
変えることが出来ない、事実。
これは夢なんかじゃない。
祐介…祐介…
あたしはあなたに、逢いに行きます。
シンデレラは必死に耐えて
やっと王子様に巡り逢えた。
自分の意思をしっかり持って
真っ直ぐ突き進んで行けば、
その先には輝く虹が見えるんや。
今までの記憶を思い起こしながら歩き続けると、思い出がたくさん詰まっているマンションが見えた。
怖いことなんてない。
怯えることもない。
でも、身体が震え始めた。
震える手をぎゅっと握りながらマンションの前に立つ。
薄暗闇の中で聳え立つそれは、楽しいことや辛いこと、幸せだったことを溢れるほど思い出させた。
「祐介…あたし来たよ」