時を越える愛歌

しばらく足を引きずりながら歩いていると、人通りが少ない道に居た。

さっきから動かせていた足にも限界がきたらしく、ほとんど動かなくなっている。

どうしようもなくなったあたしは目の前にあるマンションのゴミ置き場の壁にもたれかかった。

呼吸は無駄に荒い。

でも足から血が出て痛いはずなのに、紙で指を切った程度の痛みしか感じない。

本間に…現実か夢かも分からん…何もかもがおかしくなってる…

壁にもたれて座り込んでいると、目の前を通ってマンションに入っていく女の人が居た。

普通にこんな時間、足から血ぃ出して座り込んでる子が居ったら話かけるやろ…

でもその人もあたしの事なんか一瞬たりとも見んと通り過ぎて行った。

もしかしてと思って自分心臓に手を当ててみると、思った通り何の振動も伝わってこなかった。

なんで心臓止まってんのに血は出るんやろ…

なんで痛くないんやろ…

なんで涙は出ぇへんねんやろ…

奈美「あたしの体、どうなってんの…?」

マンションから飛び降りて、あたしは死んだ。

今は幽霊になって、この世界に存在するねんや…

なぁ、なんで神様はあたしを天国に連れて逝ってくれへんかったん?


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