時を越える愛歌

もしかして、虐待とか!?

祐介「僕、田中祐介。rainっていうバンドの１人やねんけど知ってる？」

僕が問いかけると女の子は首を横に振った。

せやろなぁ。やってまだデビューしたてやもん。

祐介「そっか。ちなみに２０歳やねん…君は？」

奈美「…愛沢奈美…高校生３年生…１８歳…」

学生やん…そういや制服やしなぁ。

でも１番気になるんはこの子が初めて言った言葉…

祐介「タメ語でええよ…ちょっと聞きたい事あんねんけど…聞いてえぇ？」

奈美「…うん」

祐介「さっき“あたしの事…見えんの？”って言ったやん？…あれってどういう意味なん？」

僕が問いかけると奈美は初めて僕の顔を見た。

色白な子やなぁと思った。

奈美「…信じてくれへんかもしらんけど…」

奈美は真剣な眼差しで話し始めた。

吸い込まれそうな綺麗な黒い瞳。

奈美「あたし…生きてる人間やないねん」

あたし、なんでこんなとこに居るんやろ…

どうせなら

さっさと死にたかったのに。
あたしが言った言葉に祐介さんは言葉も出ない感やった。

今になって足の傷がジンジン痛んでくる。

祐介「…ど、どういう意味？」

奈美「ビルの上から飛び降りてん…自殺しようと思って。でも…」

死にきられへんかった。

あたしは飛び降りた後に記憶がさっぱりない。

気付いたら町の中を歩いとったんやから…

祐介「…悪く言ったら…幽霊…？」

テンパりながら聞いてきた祐介さん顔は、いつしか真剣な顔になってる。

あたしは「うん」と頷くと、あたしを見ていた目線を逸らした。

そりゃそうやんな…

ゴミ置き場で座り込んでる子を自分を家に連れて行って、傷を消毒したと思ったら

幽霊やなんて、さ…

そう思っていると祐介さんはもう一度私を見て、

祐介「あんな…もし嫌じゃなかったら、なんでこんな事になったか教えてくれへん…？」

そう言った。
こんな私が見えるし、理由を聞いてくれる…

これも何かの縁かな？そう思って話す事にした。