時を越える愛歌
誰も居ない静か過ぎる部屋。


あたしは声を殺して泣いた。



誰も聞いてないのに、我慢することないのに、なぜか我慢しながら泣く。




ただただ流れる涙に呆れてきた。

涙が流れる理由。



それは悲しいから?

辛いから?

悲劇のヒロインやから?


いや、違う。



こんな自分に同情して欲しいだけ。

嘘でもいいから慰めてほしい。




こんな自分が惨めやから…




あたしは涙を拭き取ることなく立ち上がった。

流れる涙をそのままに歩く。


この部屋に居れば涙は止めどなく流れるだろう。



そう思って外に出た。


外は少し肌寒い。




あたしの足は勝手に公園に向かって歩きだしていた。
僕は行くあてもなく、夜道をふらふら歩いていた。


このまま外に居るわけにもいかへん。

でも、このままじゃ家にも帰られへん。










人気のない大通り、誰も居ない銀行な階段に座る。


行きかう人は急ぎ足で家に帰るサラリーマン。




僕は何も考えずにただ目の前の光景を目に焼き付けていた。





するといきなり携帯が鳴った。

着信:那都





「もしもし?」

「あ、祐介?久しぶりっw」

「おん…久しぶりやな」

「どないしたん~?元気ないやんかぁ(笑)」

「…そう、かな?」

「もう声で分かるよ!どうしたん?」

「ううん…大切な人と喧嘩してもて…」

「祐介、好きな人居ったん?」

「うん…でもっ」

「祐介、何処に居るん?」

「…家の前」

「ほんなら行くわっ!」





そう言い残し、電話は切れた。


何で嘘ついたんやろ。

家の前ちゃうのにな…



僕は家の方向へと歩き出した。


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