時を越える愛歌

家の前って言うたのは、何か家に戻るきっかけがほしかったんかな?

もう…わけ分からん。
行き場もなく、公園のベンチに座る。







ブランコは風で揺れていた。

自分の意思じゃなく、風に揺られて動くブランコ。




何か、あたしみたいやね。


自分の気持ちが上手く伝えられへんだけやのに、相手を困らせては自分も悩む。

そんなはずやないのに…



それだけが頭の中で繰り返されていた。



電灯の下で、猫が一匹横たわっていた。

ぴくりとも動かず、ただ横たわったまま…


それを見て、涙が溢れてくる。




自分も本当はあんな姿やったんやろうな…

あの猫には光輝く新しい人生が待ってる?


自分にはそんな人生があるのだろうか…





いや、必ずあたしにだってそんな人生がある。

あたしはまだこの世界で存在してる。


大切な人やって居る。





「あたし…何やってんねんやろう…」





気付けば無意識に走っていた。

祐介を探すために…
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