時を越える愛歌
見てしまった、決して見たくなかったあの瞬間を。
今のあたしには一番痛くて辛い瞬間。
2人の行動。
あんなものを見た時点であたしの勝ち目はない。
勝ち目もなんも、始めからあたしの幸せは望まれてなかったんやね。
そうやんね…
神様、あたしはあなたを憎みます。
こんな身体にして、こんなに苦しめて…
報われない恋をただただ見届けるのはやめて下さい。
あんな祐介の顔も初めてみた。
目に涙を溜めながら愛しそうに彼女を抱きしめて
あたしを冷たく眺めてくる祐介を。
めっちゃ辛かった
めっちゃ悲しかった
死んでしまいたかった…
奈美「誰か…助けて…」
この苦しみから、誰でもいいから助けて…
誰でもいいから手を差し伸べてほしかった。
あたしの手を握ってほしかった。
さっき祐介からメールが来た。
“どうしたらええんやろ”
何かあったんやな、
僕はそう思って祐介の家に向かって歩き出してた。
祐介は素直になれんくて
昔からよく僕に相談してくれた。
その相談にうまくのってあげれてたかは分からんけど、出来るだけアドバイスはしててん。
やから放っておかれへんかった。
助け合い、励まし合った仲間やもんな。
早足で夜道を歩いてると、道端にしゃがみ込んでる子がおった。
顔を手で覆って、肩を上下させながら泣いてる。
隆平「あの…大丈夫、ですか?」
「…っ…」
隆平「えっと…」
女の子の肩に手をのせると、肩を振るわせながらゆっくりと顔を上げた。
髪の毛の間から、涙でぐちゃぐちゃの顔を覗かせた。