時を越える愛歌
祐介「今日は仕事は夕方に終わるみたいやから、早く帰って来れるで!」
奈美「ほんま?最近仕事増えてきて忙しいそうやったもんね、休憩するのも大事ってことやん(笑)」
祐介「早く奈美に会えるな、今日はイチャイチャしたろ」
奈美「ちょっと」
祐介「奈美照れたー♪照れた顔も見れたことやし、行ってきまーす」
祐介はいつものようにあたしの頬に軽くキスしてから、満足気にドアを開けて外に出て行った。
あたしは頬を赤く染めたまま、リビングに戻る。
一人になった時間。
いつも不安にかられる時。
早く祐介が帰って来るようにと思いながらテレビをつけた。
祐介が出て行ってから何時間経っただろうか。
急に祐介から渡されていた携帯が鳴った。
ディスプレイに表示された名前は"祐介"。
嬉しくなって笑顔で通話ボタンを押す。
祐介「あ、奈美?」
"うん、急にどうしたん?"
そう言ったはずなのに。
あたしの口からは何の音も出ず、喉に掠れる吐息の微かな音が漏れるだけだった。
祐介「奈美?もしもーし」
"聞こえてるよ、ちゃんと聞こえてるけど"
声が、出ないねん。
喉に手を当てて何度も声を出してみる。
自分では必死に大声を出してるはずなのに、喉で全ての音を食い止められていた。