時を越える愛歌
ドアを開けても声をかけても、中から声は返ってこない。
人気が全くない室内は暗闇に包まれていた。
不意に涙が頬を伝う。
震える唇を噛み締めながら、ゆっくりリビングへと足を踏み入れた。
祐介「奈美…奈美…」
いるはずもない名前を呟く。
目に入ったものはテーブルに置かれた白い封筒だけ。
僕の予想が確信へと変わった瞬間やった。
何でやねん、こんなこと…
封筒を手に取るだけで溢れてくる涙を、僕は拭いもせずに流した。
あの時、背を向けて歩き出した奈美を。
無理矢理引き止めてでも抱き締めていたのなら、こんなことにはなってなかったかもしれない。
奈美の字を見るだけで思い出す。
あの幸せで、愛に満ち溢れていた日々を。
僕の涙は止まることを知らなかった…