時を越える愛歌
3ヶ月と聞いた瞬間、もやもやとした霧のようなものが記憶に霞んだ。
思い出せそうな記憶に蓋をされ、より一層思い出すことが困難になる。
一体自分は何がしたいのか、何を思い出したいのか、何者なのか。
自分で自分を、理解できずにいた。
そんな時、看護婦さんに連れられた女の人が病室に入って来た。
急いで来たのか若干髪の毛が乱れたように見える。
あたしを見て嬉しそうに涙を流し、ぎゅっと力強く手を握ってきた。
「良かった、良かった…」
奈美「えっ、ちょ…」
「…あっ、ごめんね、嬉しくってつい」
その女の人は手をゆっくり離して涙を拭った。
あたしの知らない人。
医者「ずっと奈美ちゃんの傍にいてくれたんやで、分からんかな?」
「そら分からんよね、何せ最後に会ったんは奈美が1歳の時やったんやから…」
医者「この人はな…奈美ちゃんのお姉さんやで」
あたしのお姉ちゃん…?
まさか、そんなはず…
ありえへんのに、きっと。
誰からも聞いたことなかった、あたしにお姉ちゃんがおったなんか。
そんなん全然知らんかった…
姉「奈美が1歳の時、あたしはお父さんの知り合いの家に養子に出されてん」